今回は伝熱について詳しく見ていきます。
詳しく勉強していくと、すごく難しい分野になります。
ですので試験で問われた時になにを理解していれば答えられるのか、
ポイントを絞ってイメージしやすいように解説していきます。
伝熱のイメージ
②壁体内外の条件は定常状態であると仮定して考えていきます。
③その時の熱流は壁のどの部位でも一定であるといえます。
熱流とは上図のように室温が時間的に変化しないと仮定するとき、常に外に熱が一定量流れ続けているとイメージしてください。
熱伝達:対流や放射によって、壁の表面を伝わる熱のことです。壁の表面は室内側、室外側の2面で熱伝達は起きる。
熱伝導:壁の表面に伝わった熱が、壁体の厚み方向に移動していくこと。
熱貫流:熱伝達(室内側)+熱伝導+熱伝達(室外側)の全てを合わせたもの。
熱伝達
熱伝達率とは単位面積当たりの壁表面で伝わる熱の量のことで、値が大きいほど表面での熱の伝わりが大きくなり壁の断熱性が低下する要因になります。
また熱伝達率は面でやり取りされる熱を表すので、単位は(W/m²・K)と覚えましょう。
熱伝達抵抗は、熱伝達率の逆数で、\(\frac{1}{\alpha}\)で表します。
この値が大きいと、抵抗が大きくなるので、表面の熱は伝わりにくくなります。
単位は、先ほどの逆数で(㎡・K/W)となります。
面が粗いと、平滑な面に比べ実質的な表面積が増えるので、熱伝達率は増加します。
対流(風速)が大きいと、熱伝達率は増加します。
ドライヤーで髪を乾かすとき温風が多い方がすぐ髪が乾きやすいのをイメージすればわかりやすいと思います。
つまり外壁側と内壁側では、外壁側の方が対流が起きやすいことから熱は伝わりやすいことを覚えましょう。
内壁側総合熱伝達率\(\alpha_i\) 7~9 [W/㎡・K] 常用値 9 [W/㎡・K]
外壁側総合熱伝達率\(\alpha_o\) 23~35 [W/㎡・K] 常用値 23 [W/㎡・K]
比べると2~3倍近く熱の伝わり方が違うことがわかります。
\(q=\alpha_i(t_i-t_{si})\) q:熱流 \(\alpha_i\):室内側熱伝達率 \(t_i\):室温 \(t_{si}\):室内表面温度
\(q=\alpha_o(t_{so}-t_o)\) \(\alpha_o\):室外側熱伝達率 \(t_o\):外気温度 \(t_{so}\):室外表面温度
つまり内外温度差は必ず正の数値になるということです。
熱伝導
熱伝導率とは壁体内部の厚さ方向に向かって、どのくらい熱が伝わりやすいかを表します。
厚さ方向が関係してくるので単位は、(W/m・K)となります。
長さの単位mであると覚えましょう。
熱伝導比抵抗は熱伝導率の逆数で、\(\frac{1}{\lambda}\)で表します。
値が大きくなれば、それだけ抵抗が大きくなり、熱が伝わりにくいことを表します。
単位は先ほどの逆数で(m・K/W)となります。
熱伝導比抵抗は、このままでは熱伝達と、熱伝導の単位と異なるので、全体の熱移動を示す熱貫流を求めることができません。
単位を揃えるためには、熱伝導比抵抗を壁の面の性能を表す「㎡」に合わせる必要があります。
そこで、先ほどの「熱伝導比抵抗」に壁の材厚をかけ合わせることで単位を合わせています。
これを熱伝導抵抗と呼び、単位は(㎡・K/W)となり、\(\frac{d}{\lambda}\)で表します。
\(q=\Large{\frac{\lambda}{d}}\)\((t_1-t_2)\) \(\lambda\):熱伝導率
\(q=\Large{\frac{\lambda}{d}}\)\((t_2-t_3)\) d:材料の厚さ
\(q=\Large{\frac{\lambda}{d}}\)\((t_3-t_4)\) \(t_1~t_4\):高温側表面温度~低温側表面温度
材料ごとに熱伝導率\(\lambda\)は異なるので、材料ごとに計算します。
その時、熱流は温度差に比例します。また、材料の厚さに反比例することを覚えましょう。
密度(比重)が大きい材料ほど\(\lambda\)は大きくなる傾向がある。
金属>コンクリート>板ガラス>木材>グラスウール
グラスウールなどの繊維系断熱材は、かさ比重が大きいほど熱伝導率は小さくなります。
かさ比重:空隙を含んだ比重。大きいイコール密になっている。
熱貫流
熱貫流率とは1㎡当たり1℃当たり、どのくらいの熱移動があるかを表します。
この数値が大きいほど、熱が移動しやすく、断熱性が悪いことになります。
単位は壁面としての性能を示すので(W/㎡・K)と覚えましょう。
熱貫流抵抗は「熱貫流率」の逆数で表します。
この抵抗値が大きいほど、抵抗が大きく、断熱性が高いということになります。
単位は、先ほどの逆数で(㎡・K/W)となります。
熱貫流率と熱貫流抵抗の関係は
\(K=\Large{\frac{1}{R}}\)
であることを覚えましょう。
また、熱伝達(室内側)+熱伝導+熱伝達(室外側)すべての抵抗を足すことで熱貫流抵抗を求めることが出来ます。
\(q=\Large{\frac{1}{R}}\)\((t_i-t_o)=K(t_i-t_o)\)
K:熱貫流率 [W/㎡・K]
R:熱貫流抵抗 [㎡・K/W]
\(t_i\):室温 [℃]
\(t_o\):外気温度 [℃]
まとめ
率は熱の伝わりやすさを意味する。
抵抗は熱の伝わりにくさを意味する。
熱伝達は表面積に比例する。表面積が2倍になれば熱流も2倍になる。
熱伝達は厚さに関係しない。
熱伝導は厚さに反比例する。材料の厚さがが2倍になれば熱流は1/2倍になる。
熱伝導は表面積に関係しない。
熱貫流は表面積に比例する。表面積が2倍になれば熱流も2倍になる。
熱貫流は厚さに反比例しない。材料の厚さが2倍になっても熱流は1/2倍にならない。
材料の厚さに関係しているのはあくまで熱伝導の部分だけであることを理解しましょう。
コメント
お世話になります。
ある問題集に「全空気方式の空気調和設備における冷房時の送風量Qは、
吹出し温度差を大きくすれば、少なくすることができる。」〇
とありましたが、ちょっと感覚的に理解出来ません。
ti-tRは分母なので、大きくなればQは小さくなるのは式的には解りますが。
Q=q/(Cp・ρ・(ti-tR))
吹き出し温度差というのは、室内温度と吹き出し空気温度の差を指しています。
つまり、冷房時をイメージした時、より冷たい空気を運ぶことで温度差が大きくなることになり、その場合送風量は少なくていい。
ということです。
これを利用したものに、低温冷風空調方式というのがあります。
通常15~16℃で送風するところを10℃程度の低温を作ることで吹き出し温度差(冷房温度差)を大きくし、送風量、送風動力を低減することが可能なシステムです。
先生ありがとうございました。
車でエアコンの設定温度を下げると
大風量になるので誤解してました。
時間軸は関係ないのですね。
冷たい風だから風量は少なくてすむ
ということですね。
ありがとうございました。