今回は換気について詳しく解説していきます。
必要換気量、圧力差換気、風力換気、温度差換気(重力換気)など、
難しい式がいっぱい出てきますが、何が問題として問われるのかを理解すれば、実はそんなに難しくないです。
青で囲っているコメントを参考にしながら理解を深めていきましょう。
5-1.必要換気量と換気回数
定常状態:室内に外部から流入する単位時間当たりの空気の質量と外部へ流出する量が、等しい状態。
➀二酸化炭素濃度からみた必要換気量Q[㎥/h]:ザイデルの式
$$Q = \frac{k}{P_i − P_o} [m^3/h]$$
\(k\):二酸化炭素の発生量 [㎥/(h・人)]
\(P_i\):室内空気の二酸化炭素許容濃度
\(P_o\):外気の二酸化炭素濃度
➁汚染物質排出のための必要換気量:室内の浮遊粉塵など汚染物質濃度\(m_i\)を許容値以下にするための必要換気量。
$$Q = \frac{D}{m_i − m_o} [m^3/h]$$
\(D\):汚染物質の発生量[mg/h]
\(m_i\):室内の汚染物質の許容濃度[mg/㎥]
\(m_o\):外気の汚染物質濃度[mg/㎥]
➂排熱のための必要換気量:室温を\(t_i\)に保つための必要換気量。
$$Q = \frac{H}{1.2 (t_i − t_o)} [m^3/h]$$
\(H\):室内の発熱量[kJ/h]
\(1.2\):空気の容積比熱[kJ/㎡・K]
\(t_i\):室内の許容温度[℃]
\(t_o\):外気温度[℃]
➃排湿のための必要換気量:室内の絶対湿度\(x_i\)を許容値以下にするための必要換気量。
$$Q = \frac{W}{\rho (x_i − x_o)} [m^3/h]$$
\(W\):水蒸気の発生量 [kg/h]
\(\rho\):空気密度(=1.2) [kg/㎥]
\(x_i\):室内の重量絶対湿度 [kg/kg (DA)] DAは乾燥空気
\(x_o\):外気の重量絶対湿度 [kg/kg (DA)]
$$換気回数:N=\frac{Q}{V}[回/h]$$
開放型燃焼器具:燃焼に必要な空気を室内で確保し、燃焼排ガスを室内に放出。大量の水蒸気と二酸化炭素等が室内に発生する。
半密閉型の燃焼機器:燃焼に必要な空気に室内の空気を使用し、排気ガスを排気筒等から屋外へ放出。
密閉型燃焼器具:燃焼に必要な空気を屋外から取り入れ、燃焼排ガスも屋外に放出。室内空気の汚染が少ない。
燃焼を伴う室の給気量:ボイラー室、発電機室、直だき吸収冷凍機室などの燃焼を伴う室の給気量は、「室内発熱を除去するための換気量」に「燃焼に必要な空気量」を加算する。
厨房の換気計画:厨房側から客席側に臭気などが流入しないよう、厨房側を客席側より負圧に保つ必要がある。
室容積と室内濃度:換気量Q、室内での汚染物質発生量k、外気の汚染物質濃度\(P_o\)が一定の時、最終的な定常状態における室の濃度\(P_i\)は、室容積が変化しても一定の値である。
換気回数N、室内での汚染物質発生量k、外気の汚染物質濃度\(P_o\)が一定の時、最終的な定常状態における室の濃度\(P_i\)は、大きな室に比べて小さい室の方が高くなる。
5-2.換気方式と効率
第1種機械換気方式:給気と排気を機械で行うことで、室内を負圧にも正圧にもすることができる方式。
第2種換気方式:給気を機械、排気を自然に行い、室内を正圧に保つ方式。燃焼用空気が必要なボイラー室に採用。
第3種換気方式:給気を自然、排気を機械で行い、室内を負圧に保つ方式。室内で発生する臭気等を周囲に漏らしたくないトイレ、厨房、浴室等に採用。
$$換気効率:\frac{換気回数1回分の給気をするのに要する時間}{室内の空気がすべて外気に置き換えられるのに要する時間}$$
ピストンフロー:気流がピストンのように動き、混合せずに古い空気を押し出す。換気効率は1.0で最も効率が良い。
完全混合:すべての点の汚染物質濃度が等しく減衰して混合される。換気効率は0.5である。
空気齢:室内の各地点における空気の新鮮度(新鮮外気の供給効率)を示すものであり、その地点までの新鮮外気の平均到達時間を表したもの。空気齢が小さいほど、その地点における空気の新鮮度は高くなり、換気効率が高くなる。
空気余命:室内のある点の空気が排気口に至るまでの平均時間。空気余命が小さいほど発生した汚染質が室内に拡散しにくく、速やかに排出できることを意味する。
空気寿命:空気齢+空気余命
置換換気(ディスプレイスメント・ベンチレーション):室下部に設置された低速吹出口から吹き出された室温よりも低温の空気が、居住域で発生した汚染空気の混合を抑制して室上部に押し上げ、排出する方式。汚染物質が周囲空気より高温又は軽量な場合や、小空間に大風量の給気をする場合に有効。
5-3.開口部前後の圧力差と換気量
圧力差と換気量:開口部の前と後で圧力差があると空気は流れる。圧力差による通過風量(換気量)は、開口面積Aに比例し、圧力差ΔPの平方根に比例する。
Q:開口を通過する空気量(換気量)[㎥/h] ΔP:開口部前後の圧力差 [Pa] ρ:空気密度(≒1.2)[kg/㎥]
α:流量係数 A:開口面積 αA:総合実行面積[㎡]
流量係数α:開口部の形によって、空気の流れる量が変化するということを表している。通常の窓で端部が直角な窓の流量係数αは0.6~0.7。ベルマウス形状は開口断面が滑らかに縮小している形であり、流量係数αは1.0。
並列合成:複数の開口部が並列して並ぶ場合、開口部各々の実効面積を合計して総合実効面積(合成αA)を求める。
直列合成:αAの値は小さい方の開口部の実効面積を越えることはない。最大となるのは、α1A1=α2A2(5:5)の場合で、合成\(\alpha A=\frac{1}{\sqrt{2}}α_1 A_1\)≒0.7\(\alpha_1 A_1\)である。
風力換気:圧力差で空気が流れるのと同じく、風圧の差でも空気は流れる。風力による換気量は、風速υに比例し、風圧係数の差(C1−C2)の平方根に比例する。
υ:風速 [m/s] C1:風上側風圧係数 C2:風下側風圧係数
温度差換気(重力換気):空気は温度が高くなると軽くなり、低くなると重くなる。また開口部の位置に高低差がある場合、圧力差により空気が流れる。温度差及び高低差による換気量は、開口部の高低差hの平方根に比例し、室内外の温度差(\(t_i−t_o\))の平方根に比例する。
h:開口部の高低差 [m] (ti−to):室内外の温度差 [℃] Ti:室内の絶対温度 [K](室内温度ti+273℃)
中性帯:温度差換気においてある高さで室内外の圧力差がゼロになる部分。上部に大きな開口があれば上に移動し、下部に大きな開口があれば下に移動する。上下開口を通過する空気量Qが等しいと考えると、実効面積αAが大きいほど、内外圧力差ΔPは小さくなる。
温度差による換気経路:室温が外気よりも高ければ、中性帯よりも下の開口から上方へ流れ、室温が外気よりも低ければ、中性帯よりも上の開口から下方へ流れる。
5-4.機械換気
軸流式:換気扇などプロペラ形のファンで、軸方向に送風。静圧範囲が低い。換気扇や冷却塔などに用いられる。
遠心式:羽根車の回転による遠心力の作用で、中心から半径方向に送風。静圧範囲が高い。ダクトに用いられる。
全圧:空気の流れに正対した方向の圧力。全圧=静圧+動圧となる。
静圧:空気の流れに直交した圧力。
動圧:流れる空気の風速が生む圧力。動圧=全圧-静圧で検知することができる。
$$円形ダクトの圧力損失:\Delta P_T=\frac{\lambda L}{d}P_V =\frac{\lambda L}{d}・\frac{1}{2}\rho \upsilon^2$$
\(\lambda\):ダクトの摩擦係数 \(L\):ダクトの直管部の長さ[m] \(P_V\):動圧[Pa]
\(d\):ダクトの内径[m] \(\rho\):空気の密度[kg/㎥] \(\upsilon\):平均風速[m/s]
①ダクトの長さに比例し、ダクトの内径に反比例する。
②動圧に比例(風速の二乗に比例)する。
局部圧力損失:局部圧力損失と等しい圧力損失を生じる同径の直管ダクトの長さ(相当ダクト長)に換算して概算することができる。すなわち、円形ダクトの圧力損失と同じ特徴を持つ。
送風機の軸動力:送風機の全圧と送風量との積に比例する。また、回転数の3乗に比例する。
送風機の運転風量:ダクト系を変更しない時の、「同一性能の送風機を2台並列運転する場合」と「そのうち1台を単独運転する場合」の送風機の運転特性は、装置抵抗曲線と静圧曲線との交点が運転風量となる。この交点から、単独運転のA点(風量)、2台運転のB点(風量)の運転状態を比べると、運転風量の増加の割合は、2倍よりも小さくなる。
5-5.住宅の気密性とシックハウス対策
シックハウス対策:住宅等の居室に対しては、原則として、換気回数0.5回/hの設備容量のある機械換気設備の設置が必要となるが、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる場合は、居室の天井高さの区分に応じて、換気回数を減ずることが可能である。
天井裏等の制限:天井裏から居室へのホルムアルデヒドの流入を防止するため、次のいずれかの対策が必要となる。
①第一種、第二種ホルムアルデヒド発散建築材料を使用しない。
②気密層や通気止めを設けて居室と区画する。
③換気設備を適切に用いて、居室内の圧力を天井裏等よりも高くする。
自然給気口:住宅の全般換気を第三種機械換気方式(排気セントラル方式)で行う場合、居室に設ける自然給気口は、冬期の冷たい空気が下から入り温熱環境を乱さないよう、床面からの高さを1.6m以上とする。
全般換気:換気径路上にあるドアには、ドアガラリやアンダーカット等を設ける。
個別換気:住宅等において、全般換気の換気経路としない部分(第一種換気方式によって居室ごとに個別に換気を行う場合における廊下等)に設ける開き戸等の建具については、当該建具が廊下等からの汚染空気の流入経路とならないようにするため、アンダーカットや換気ガラリ等の措置が講じられていないものを用いることが望ましい。
①ザイデルの式は式の変形を覚える。
②圧力差換気の式は簡略式を覚える。
最後に
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