今回は吸音について詳しく解説していきます。
前回の遮音に関する知識と比べながら、なにが違うのかを理解することがとても重要なことになります。
高音域、低音域の特性と合わせて整理していきましょう。
吸音の特性
$$吸音率 \alpha = \frac{透過音 + 吸収音}{入射音}$$
反射音以外の音のエネルギーとも考えられる。
入射音を1としたとき、下式となる。
$$\alpha = 1 – \rho (\rho:反射率)$$
ポイント
壁の吸音率\(\alpha\)が小さいほど、 壁に反射される音のエネルギーは大きくなる、という関係になります。
吸音率が高い材料は、透過率が大きいものが多いため、遮音性能が高いとは限らず、むしろ遮音効果は期待できない場合が多いことをイメージしておきましょう。
壁の吸音率\(\alpha\)が小さいほど、 壁に反射される音のエネルギーは大きくなる、という関係になります。
吸音率が高い材料は、透過率が大きいものが多いため、遮音性能が高いとは限らず、むしろ遮音効果は期待できない場合が多いことをイメージしておきましょう。
多孔質材料
繊維状、連続気泡性の発泡樹脂など細粒状の通気性のある材料(グラスウー ルなど)が、吸音材として最も一般的に使用されている。
多孔質材料の特性
①高音域の吸音率は大きいが、低音域の吸音率は小さい。
②多孔質材料の厚さを増すと、特に中低音域の吸音率が増加する。
③吸音材の背後に空気層を設け、空気層の厚さを増すほど低音域の吸音率が増加する。
④表面を塗装等で被覆し、通気性を悪くすると高音域の吸音率が低下する。
①高音域の吸音率は大きいが、低音域の吸音率は小さい。
②多孔質材料の厚さを増すと、特に中低音域の吸音率が増加する。
③吸音材の背後に空気層を設け、空気層の厚さを増すほど低音域の吸音率が増加する。
④表面を塗装等で被覆し、通気性を悪くすると高音域の吸音率が低下する。
ポイント
イメージとして高音域の音は直進性が高いので、細かい穴が空いている多孔質材料を透過しやすく、空気層で減衰する、と覚えましょう。
表面が塗装等で被覆されると、細かい穴を透過出来なくなるので、もともとの特性であった、高音域を吸音しやすいという特性が低下します。
イメージとして高音域の音は直進性が高いので、細かい穴が空いている多孔質材料を透過しやすく、空気層で減衰する、と覚えましょう。
表面が塗装等で被覆されると、細かい穴を透過出来なくなるので、もともとの特性であった、高音域を吸音しやすいという特性が低下します。
板状材料
合板やハードボードなど薄い板状の材料で、背後に空気層を設けると、音のエネルギーによって板が振動し、材料の内部摩擦によって吸音する。
板状材料の特性
①低音域の共鳴周波数付近の吸音率は高く、中高音域の吸音率は低い。
②背後に空気層を設けず、剛体に密着させる と板振動が起きないので吸音しない。
③背後の空気層に多孔質材料を挿入すると、低音域のピーク位置の吸音率が高くなる。
④板状材は表面にペンキを塗っても、低音域板状材料の吸音特性 の吸音率はあまり変わらない。
①低音域の共鳴周波数付近の吸音率は高く、中高音域の吸音率は低い。
②背後に空気層を設けず、剛体に密着させる と板振動が起きないので吸音しない。
③背後の空気層に多孔質材料を挿入すると、低音域のピーク位置の吸音率が高くなる。
④板状材は表面にペンキを塗っても、低音域板状材料の吸音特性 の吸音率はあまり変わらない。
ポイント
板状材料は、細かい穴が空いている材ではないので、音が材料にぶつかったとき、高音域の音は反射してしまい、吸音率が低いと、イメージしましょう。
板状材料の背後に多孔質材料を入れたとしても、音が透過しやすくなるわけではないので、高音域の吸音性能はほとんど期待できません。
板状材料は、細かい穴が空いている材ではないので、音が材料にぶつかったとき、高音域の音は反射してしまい、吸音率が低いと、イメージしましょう。
板状材料の背後に多孔質材料を入れたとしても、音が透過しやすくなるわけではないので、高音域の吸音性能はほとんど期待できません。
孔あき板
板の孔から音波が入射すると、背後の空気層がバネの役割をして孔の部分の空気を振動させ、孔の部分の空気と孔壁面との摩擦粘性抵抗により、吸音する。
孔あき板の特性
①空気層の厚さを増すと、吸音の山は低音側へ移動する。
②孔あき板の開孔率が小さいほど吸音の山が明確に現れ、開孔率を増すと吸音率が最大となる周波数は高くなる。
③孔あき板のすぐ背後に多孔質材料を挿入すると、吸音率は全般的に高くなる。
①空気層の厚さを増すと、吸音の山は低音側へ移動する。
②孔あき板の開孔率が小さいほど吸音の山が明確に現れ、開孔率を増すと吸音率が最大となる周波数は高くなる。
③孔あき板のすぐ背後に多孔質材料を挿入すると、吸音率は全般的に高くなる。
ポイント
孔あき板の開口率を増すということは、より穴がいっぱい空くということなので、多孔質材料と同じく、直進性の高い高音域の吸音性能が高くなります。
また背後に多孔質材料を入れれば、穴が空いている材の次に、細かい穴が空いている材に音が透過していくことになり、吸音率は全般的に高くなることがイメージできます。
孔あき板の開口率を増すということは、より穴がいっぱい空くということなので、多孔質材料と同じく、直進性の高い高音域の吸音性能が高くなります。
また背後に多孔質材料を入れれば、穴が空いている材の次に、細かい穴が空いている材に音が透過していくことになり、吸音率は全般的に高くなることがイメージできます。
まとめ
どうだったでしょうか。
音は目に見えないのでイメージしにくいですが、特性を理解してしまえばイメージは簡単になります。
材料に音がぶつかったとき、反射されやすい材なのかどうかをまず考えてみましょう。
コメント
お世話になります。
ググっていたらここにきました。
調べても理解できないので教えていただければ幸いです。
垂直入射透過損失TLo≒TL+5dB(TLは乱入射透過損失)
自分の感覚では、透過損失は、乱入射のほうが
大きいように思えるのですが、どう考えたらいいのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
TL≒TLo-5dBと考えた方がわかりやすいと思います。
TL(ランダム入射)の場合
TLo(透過損失)が小さくなるとは、つまり透過音が大きくなるということです。
垂直入射は、やまびこで自分の声が跳ね返ってきやすいのは山(壁)に対して音が垂直にぶつかったときとイメージすればわかりやすいです。
ランダムう入射は、たいこの音を室内で響かせた場合いろんな方向に反射を繰り返して壁にぶつかった音は、壁を隔てた反対側の室に聞こえやすい、とかでもイメージしやすいです。
とまとねこ先生 回答ありがとうございます。
なんとなくイメージはできましたが・・・。
垂直入射は、やまびこで自分の声が跳ね返ってきやすいのは山(壁)に対して音が垂直にぶつかったときとイメージすればわかりやすいです。
⇒乱入射のほうが跳ね返りやすいと思ってました。
ランダムう入射は、たいこの音を室内で響かせた場合いろんな方向に反射を繰り返して壁にぶつかった音は、壁を隔てた反対側の室に聞こえやすい、とかでもイメージしやすいです
⇒いろんな方向に反射を繰り返して壁にぶつかった音は、壁を隔てた反対側の室に聞こえにくいと思ってました。
失礼いたします。
身近な現象でイメージしやすいことがあれば一番理解しやすいと思ったのですが。
フラッターエコーという現象があります。
鳴き竜ともいわれ、日光東照宮の内陣天井で手をたたくと音が反響を繰り返して何重にも聞こえる現象です。
これは吸音性があまり良くない材で、天井と床が平行面であるときに起きやすい現象です。
つまり平行面に対して音が入射すると、反射した時に音があまり拡散せず、床と天井で音が反射を繰り返して起きます。
このことから垂直入射のほうが音が跳ね返りやすいのがイメージできますでしょうか?