採光・照明の分野はまず単位をしっかり理解することから始めましょう。
ただ暗記するのではなく、どういう意味なのかを考えることで記憶が定着します。
図や表を参照しながら、イメージがちゃんと出来ているかを意識してみてください。
2-1.比視感度
比視感度:人間の目に光として感じるのは380~780nmの波長(可視光線)の放射エネルギーであり、最も敏感である波長の視感度を1.0としたとき、これに対する他の波長の視感度の割合。
プルキンエ現象:明るいところでは555nm(緑~黄色)が最も敏感であり、暗いところでは視感度にずれを生じ、青~青緑を最も強く感じる現象。
明順応:暗いところから明るいところに移動したとき、視力は数分以内で回復する。
暗順応:明るいところから暗いところに移動したとき、視力の回復に30分程度要する。
2-2.光の単位
光束F(lmルーメン):光のエネルギーがある面を通過する量。標準比視感度で補正され、光束を元に表される光の単位は全て比視感度補正されている。
光度I(cdカンデラ,lm/sr):光のエネルギーの強さ。点光源から特定の方向に出射する単位立体角当たりの光束。光源からの距離が変わっても値は一定である。
照度E(lxルクス,lm/㎡):受照面に入射する単位面積当たりの光束。照度は光度に比例し、光源からの距離の2乗に反比例する。
$$E=\frac{I}{R^2}$$
光束発散度M(rlxラドルクス,lm/㎡):光源、反射面、透過面から出射する単位面積当たりの光束。反射面における光束発散度Mは、照度に反射率\(\rho\)を乗じることで計算できる。
$$M={{\rho}E}$$
輝度L(cd/㎡,lm/(㎡・sr)):光源、反射面、透過面から特定の方向(視点)に出射する、単位面積当たりの光度。または単位面積・単位立体角当たりの光束であり、視点からの明るさを表す。
目で見た明るさ感と直接的な関わりがあり、視力・見やすさ・グレアの評価に用いられる。
均等拡散面の場合\(M={\pi L}\)となり、輝度は光束発散度に比例し、円周率\(\pi\)に反比例する。
$$L={\frac{\rho}{\pi}E}$$
光度と輝度:光度は、照度、光束発散度、輝度とそれぞれ比例関係にあり、光度が2倍になれば輝度も2倍になる。
均等拡散面:どの方向から見ても輝度が一様となる面。
逆自乗の法則:
$$E=\frac{I}{r^2} [lx]$$
E:照度 I:光度 r:点光源からの距離
余弦の法則:
$$E’=\frac{I}{R^2}\cos\theta [lx]$$
R:点光源からの距離 :入射角
2-3.明視
照度の均斉度:\(\frac{作業面の最低照度}{作業面の最高照度}\)または\(\frac{作業面の最低照度}{作業面の平均照度}\)
人工照明による場合は、\(\frac{1}{3}\)以上が望ましい。
側窓採光の場合は、\(\frac{1}{10}\)以上が望ましい。
均斉度を全般照明時における作業面の平均照度に対する最低照度は、0.6以上が望ましい。
輝度比:背景の輝度に対する視対象の輝度。
高齢者の色覚:人間は、年をとるにつれて目の水晶体が黄変化し、物が黄色を帯びて見えるようになり、視力が低下するため、輝度比を1.5~2.0とする。
グレア:視野内の高輝度な点・面あるいは極端な輝度対比などにより引き起こされた視力低下や、目の疲労・不快感などの障害。グレアは、視野内に直接目に入る直接グレアと、反射によって物体が見えにくくなる反射グレアなどがある。
光幕反射:机上面の書類などの光の反射によって、輝度対比が小さくなり、字などが読みにくくなるグレアをいう。
黒板に対して、窓などからの光の入射角が70度以上になると、光を反射して黒板の字が見えにくくなるのも光幕反射のためである。防止方法は、視線方向へ反射する方向に光源を配置しないことが重要である。
ルーバー:照明設備の下面に取り付けた場合、グレア防止に効果がある。
ただし、ルーバーによって室全体が暗くなり、取り付け前と同じ平均照度を確保するためには、ワット数(消費電力)が大きい照明器具を使用する必要があり、照明消費エネルギーは増大する。
2-4.採光計画
頂側窓(ハイサイドライト):天井面近くの高い位置に設けられた鉛直や鉛直に近い向きで設置される窓。
高所において、北側採光にすると、照度分布が均一になり、安定した光環境が得られる。通常の側窓に比べて、均斉度が高く、壁面の照度も高くすることができるので、美術館の展示室などに適する。
均斉度:窓からの採光において、透明ガラスを用いる場合よりも光の拡散性が高いガラス(すりガラス等)を用いる場合の方が、室内へ光が拡散し、均斉度は高くなる。
2-5.照明方式
タスク・アンビエント照明方式:全般照明(アンビエント照明)で周囲に最低限必要な明るさを確保し、作業面は局部照明(タスク照明)によって照度の不足分を補う方式。
局部照明の1/3~1/10の照度の全般照明を併用する。
全般照明のみで作業に必要な照度を確保する全般照明方式に比べて、電力消費量を少なくすることができる。受照面の照度分布だけではなく、輝度分布も考慮することが望ましい。
配光曲線:光源から各方向の光度の分布を、光源を原点として極座標(任意の点を基準軸との角度と原点からの距離で表した座標)で示した曲線である。
2-6.採光
全天空照度:全天空が望める水平面における天空光のみの照度で、直射日光による照度は含まない。必要最低照度を確保するには暗い日(5000lx)、標準状態としては普通の日(15000lx)を採用。
昼光率:室内のある点における屋外照度の時間的な変化と天候に影響されない指標。
$$昼光率D = \frac{室内のある点の水平面照度E}{全天空照度Es}×100 \text{[%]}$$
昼光率:直接光による直接昼光率と天井や壁面からの反射光による間接昼光率の合計として求めることができる。
昼光率D = 直接昼光率Dd + 間接昼光率Dr
直接昼光率Dd:Dd = ZMRU
Z:窓ガラスの透過率 M:保守率(汚れ等) R:窓面積有効率(窓枠等を除いた有効割合) U:立体角投射率
立体角投射率U:水平投影面積S’’は窓の位置が高いほど、窓に近づくほど、大きくなる。水平投影面積S’’が大きくなると立体角投射率Uは比例して大きくなることから、直接昼光率も大きくなる。
間接昼光率Dr:天井や壁面からの反射光によって室内のある点における水平面照度が変化するため、昼光率は天井や壁面の反射率によって異なる。
基準昼光率:全天空照度を普通の日の15,000 lxとしてJISの照度基準を満足するように定めた昼光率である。普通教室、事務室は2%程度とし、精密製図は5%程度とする。
2-7.平均照度計算
水平面照度E[lx]:作業面の平均照度であり、床上80cm、40cm、床面のいずれかを基準面とする。
$$E = \frac{FNUM}{A} [lx]$$
F:照明器具1台の光束 [lm] N:ランプの個数 U:照明率 M:保守率 A:床面積 [㎡]
照明率U:照明器具から発する光のエネルギーがどれだけ有効に作業面に届くかの割合であり、天井や周壁の反射率、室指数および器具の配光・効率によって異なる。
$$照明率U=\frac{作業面に到達する光束}{ランプから発する全光束}$$
室指数:部屋の形状・寸法の影響を加え、天井が低いほど大きい値となる。
$$室指数 =\frac{XY}{H(X + Y)}$$
X:室の間口 Y:室の奥行 H:作業面から光源までの高さ
保守率M:ランプの経年劣化やほこり等による照明器具の効率の低下をあらかじめ見込んだ定数。
$$保守率M=\frac{ある期間使用後の作業面の平均照度}{初期の作業面の平均照度}$$
人感センサー:赤外線等で人の所在を感知し、源光・消灯する制御。
適正照度維持制御(初期照度補正制御):余分な明るさをセンサーにより自動的に設定照度へ調光する制御。消灯、点灯を行う装置ではない。
同一の照明器具配置において、適正照度維持制御の有無による差は、ランプの劣化が多い時、すなわち清掃直前または交換直前に最小となる。
照度分布:照明による被照面(机上面や床面など)の明るさの分布を示したものであり、等照度線で示される。
照明器具の水平間隔:照度分布を考慮して、作業面から照明器具までの高さの1.5倍以内。
推奨照度:日本画の場合150lx~300lx、洋画の場合300lx~750lx。
2-8.光源の種類と特徴
演色性:物体色の見え方を決定する光源の性質であり、光源の分光分布によって決まる。
平均演色評価数:基準光源と試験光源を比べ、色度の差を100から差し引いた値。100に近いほど演色性が良い。
色温度:光源の出す光の色を、これと等しい光色を出す黒体の絶対温度によって表したもの。
色温度の低→中→高という変化に対し、光色は赤→橙→黄→白→青と変化する。光の感じは暖→中→冷と変化する。
照明器具の色温度の高低:一般に、高いほうから昼光色蛍光ランプ、昼白色蛍光ランプ、白熱電球、高圧ナトリウムランプの順である。
色温度が低い光源(赤味を帯びた光色)は、低照度では落ち着いた暖か味のある雰囲気が得られるが、高照度になると暑苦しい感じとなる。色温度が高い光源(青味を帯びた光色)は、高照度では涼しく爽快な雰囲気が得られるが、低照度になると陰気な感じとなる。
色温度(光源の光色)が同じでも、光源の分光分布が異なれば、演色性は異なる。
➀光の単位の関連付け ➁昼光率のイメージ
最後に
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