今回は音響の分野から遮音ついて、その特徴を整理していきたいと思います。
しっかり理解していないと、勘違いしてしまう現象でもあるので、
基本的な音の性質をイメージしながら覚えるようにしましょう。
Contents
遮音の特徴
入射音が壁体等にぶつかったとき、音は3つの成分に分解されます。
壁体に反射された音を反射音、
壁体に吸収された音を吸収音、
透過した音を透過音といいます。
壁体の遮音性は、透過した音が入射音に比べてどれだけ弱くなったかをデシベル(dB)で表したもので評価します。
$$透過率 \tau = \frac{透過音}{入射音}$$
つまり、透過率を逆数で表すことで、それ以外の音(反射音+吸収音)がどのくらいの大きさなのかを表したのが透過損失ということになります。
$$透過損失 TL = (入射音の音圧レベル)-(透過音の音圧レベル)$$
$$= 10log_{10} \frac{入射音のエネルギー}{透過音のエネルギー} = 10log_{10}\frac{1}{\tau}$$
透過損失は、入射音に対して透過音が10分の1のときは透過損失は10dB、100分の1のときは20dBとなり、
透過損失の値が大きいほど遮音性能が良いことを表しています。
透過損失は透過音以外の音の強さレベル→反射音+吸収音
透過損失は透過音が小さくなると、大きくなる。
透過損失が大きい=遮音性能が良い。
単層壁に音が垂直入射したときの透過損失は、面密度が大きいほど、また、周波数が大きいほど大きくなります。
$$面密度 = 密度[kg/㎡] × 厚さ[m]$$
面密度が大きいとは、1㎡あたりの重さが重い材料のことです。
つまり、コンクリートや鉄で、厚さがあるものは、
透過損失が大きい→遮音性能が良い
と判断できます。
また音と周波数の特性については前回の記事で詳しく取り上げています。
その特性をイメージすると、
まず、壁に対して垂直に入射すると、音は反射しやすくなります。
これは、やまびこをイメージするとわかると思います。
周波数の高い音というのは、直進性が高い音になります。
つまり壁に対して垂直に入射しやすく、反射されやすい→透過損失が大きくなる。
ということです。
また、ランダム入射の場合は、垂直入射と比べて、音があらゆる角度から入射してくるため、
透過音が大きくなる→透過損失が小さくなる。
ということを覚えておきましょう。
透過損失は、
面密度が大きくなると、大きくなる。
周波数が大きくなると、大きくなる。
垂直入射の時が、最大となる。
ランダム入射(角度がついている場合)、小さくなる。
コインシデンス効果
コインシデンス効果とは、単層壁に音波が入射した時に、材料が細かく揺れて曲げ振動が起こり、
音波の波長と一致する(共鳴周波数)ことで共鳴が起こり、透過損失が小さくなることをいいます。
透過損失が小さくなるということは、透過音が大きくなり、遮音性能は悪くなることを意味しています。
壁の厚さが厚くなると、どうなるのかイメージしてみましょう。
例えばベニヤ板みたいに揺れやすい薄い板と、
何重にも重ねた集成材とでは、
薄いベニヤ板の方が揺れやすいのがわかると思います。
音が板にぶつかったとき、
揺れやすい(薄い)=板の振動回数が多い→周波数は高い音と共鳴しやすい。
逆に、
揺れにくい(厚い)=板の振動回数が少ない→周波数は低い音と共鳴しやすい。
と覚えましょう。
音が単層壁にぶつかったとき、
共鳴する領域(共鳴周波数)でコインシデンス効果が表れる→透過損失が小さくなる→遮音性能は悪くなる。
壁の厚さが厚くなる→共鳴周波数は低くなる→より低音域でコイシデンス効果が表れる。
中空層のある二重壁では、空気層を一つの材として考えたとき、共鳴する領域が二重壁の材で起こるものと、空気層で起こるもの、
二つの領域でコインシデンス効果が起きてしまいます。これを共鳴透過周波数といいます。
一般的な二重壁では、低音域で共鳴透過が起こります。
空気層の厚さを厚くすると、先ほどのコインシデンス効果の説明と同様に、空気層が揺れにくくなるため、より低い周波数で共鳴する(透過損失が小さくなる)ようになります。
このことから、中空層のある二重壁にすることは遮音性能をあげることにはなりません。
また中空層の狭い複層ガラスの遮音性能は、同一面密度の単層ガラスとあまり変わらず、むしろ共鳴透過により、周波数によっては遮音性能が低下する場合があります。
まとめ
音が壁にぶつかったとき、その音はどのように分解されるのかイメージできるようにしましょう。
次回は吸音について詳しく整理していきます。遮音と似ていますが混同すると、ややこしくなります。
前回に引き続き、イメージを整理しておくことが、知識の定着につながります。
覚えるのではなく、一つずつ理解していきましょう。
コメント
>このことから、中空層のある二重壁にすることは遮音性能をあげることにはなりません。
この結論になる理由がわかりません.
最後のグラフで,二重壁が不利な範囲以外については,二重壁よりも一重壁の方が透過損失が明に大きくなっています.
共鳴透過が起こる周波数が十分小さくなるよう,厚い二重壁とすることで,一重壁よりも遮音性能が高い構造ができるのではと思ってしまいます.
ド素人なためなにか勘違いしていましたらご指摘いただけますと嬉しいです..
その通りです。壁を厚くすれば質量に比例して遮音性能は向上します。
ここで述べているのは質量が同じ場合、二重壁にしても、ある一定の領域では遮音性能が落ちるということです。
丁寧に述べるなら、すべての領域で遮音性能は向上しないということです。