今回は気象、温熱環境指標、環境基準について詳しく解説していきます。
温熱環境指標のポイントは6要素をしっかりイメージ出来ていることです。
そのうえでそれぞれの温熱環境指標の特徴を捉えていきましょう。
4-1.気象
デグリーデイ(度日):その地域の寒暖を表し暖房(冷房)期間中の設定温度と日平均外気温度との差を累積したもの。
TAC温度:実際の気象データを統計処理して得られた値であり、ある超過確率を設定して、稀にみられる猛暑等の要因を取り除いたものである。
風速増加率:高層建築物の建設などによって、周辺の地上風速が建設前と比べて何倍に増加するのかを示したもの。
$$風速増加率=\frac{建設物を建設した後の地上風速}{建設物を建設する前の地上風速}$$
高層建築物を建設した場合、周囲に建築物がない場合に比べて、周囲に低層建築物があるほうが、風速増加率は大きくなる。ただし、風速自体は周囲に低層建築物がある方が小さい。
剥離流:建物に当たった風が壁に沿って流れ、建物の隅角部で壁から離れていくときに、風速が周囲よりも速くなる部分。ビル風の主な発生原因の一つであり、剥離流による風速増加を防ぐには、建設地における風の発生しやすい方向に対して受風面(見付面積)を小さくするように計画する、矩形建築物の隅角部を隅欠きしてセットバックする、建物自体を流線形にする等が有効である。
2棟間に発生する強風:建築物の間隔を狭くすると、風速の増加する領域は狭くなるが、風速増加率は大きくなる。
ヒートアイランド現象:都市部の気温が郊外よりも島状に高くなる現象。都市部では、都市活動に伴う建築物や自動車からの排熱がきわめて大きく、建築物や地盤(舗装道路)への日射の蓄熱(吸収)量も大きい。さらに、舗装道路の増加に伴う緑地や水面の減少によって蒸発冷却効果が低下し、結果として都市部の気温は、周囲の郊外に比べて3~4℃程度上昇している。
4-2.温熱環境
温熱環境に関する6要素:環境側要因の気温(室温)、湿度、気流、放射(ふく射)、人体側要因の代謝量、着衣量がある。
気温:椅座位の場合、くるぶし(床上0.1m)と頭(床上1.1m)との上下温度差は3℃以内が望ましい。
湿度:高温でも低湿であれば蒸発量が増すので涼しく感じ、低温でも高湿であれば寒さが和らぐ。
気流:気流の乱れや吹き出し温度差が過大であると、平均風速が低くても不快に感じることがある。
コールドドラフト:暖房時など窓下を降下する冷気流をいう。
放射:室内において、周壁の温度が高いと温かく感じ、逆に周壁の温度が低いと涼しく感じる。
放射の不均一性の限界:冷たい窓や冷たい壁面に対して10℃以内としている。
これに対し、暖かい天井に対する放射の不均一性(放射温度の差)の限界は5℃以内としており、天井の照明器具等からの頭への温かい放射は不快感が強い。
なお、暖かい壁面、冷たい天井に関しては不快感は少ない。
床表面温度:長時間接触による低温火傷を考慮して、29℃以下(上限30℃程度)が望ましいとされている。
代謝量:体表面積1㎡当りの熱量[W/㎡]
$$代謝量=\frac{作業時の代謝量}{椅座安静時の代謝量} [met] (1met=58.2W/㎡)$$
標準的な体格の成人の体表面積は、一般に1.6~1.8㎡程度であり、椅座安静時における成人の代謝量は100W/人程度となる。
発生熱:一般に人体からの発生熱は、体表面からの対流、放射による顕熱と、汗などの水分蒸発による潜熱がある。
潜熱発熱量:作業の程度に応じて代謝量が増えるにつれて、顕熱、潜熱ともに増加するが、顕熱よりも潜熱の増加の割合が大きく、全熱に占める潜熱の割合が増加する。
例えば、夏期で湿度50%、気流速度0.2m/s、着衣量0.6cloの条件で、室温24℃において、静座の場合における顕熱:潜熱は、(73:24 →3:1)であるのに対して、事務所業務の場合における顕熱:潜熱は、(81:40→2:1)となる。
着衣量:着衣の熱抵抗をクロ値[clo]で表す。1cloとは、気温21℃、相対湿度50%、気流速度0.1m/sの室内で着席安静にした人が快適である着衣量の熱抵抗。標準的な背広が1clo、夏服が0.6clo、冬服が1.5clo程度、裸体は0cloとなる。
4-3.温熱環境指標
予測温冷感申告(PMV):温熱の6要素を考慮した総合的な温熱環境指標で、多数の在室者の平均的な温冷感を示す。
均一な環境に対する温熱快適指標であり、不均一な放射環境、上下温度分布が大きな環境および通風環境に対しては適切に評価できない場合がある。
ISO(国際標準化機構)では、PPD(Predicted Percentage of Dissatisfied:予測不満足者率)<10%が望ましいとされており、一0.5<PMV<+0.5の範囲が推奨値となる。
-1.0<PMV<+1.0の範囲で使用するのが望ましい。
PPD:在室者の予想不満足率。その環境が快適でないと答えると予想される割合。
ET*:PMVと同様に6要素を考慮した総合温熱環境指標。PMVよりも幅広い温熱条件での適用が可能である。
SET*(標準新有効温度):新有効温度ET*を標準化した環境に当てはめた指標であり、相対湿度50%、気流は静穏、MRT(平均放射温度)=室温、代謝量1.0~1.2met、着衣量0.6cloという仮想条件を標準状態とし、任意の環境にいる人間が、その時と同じ温熱感覚(平均皮膚温度、皮膚濡れ面積率が任意の環境の場合と同じ)で、放熱量も同じとなる標準状態の室温をいう。
一般に、SET*≒22~26℃を「快適、許容できる」温冷感の範囲としている。
SET*=20℃の場合、温冷感は「やや涼しい、やや不快」に該当する。
作用温度(OT : Operative Temperature):効果温度ともいい、人体周辺の放射熱源と空気温度、気流が人体に与える影響を評価するもので、主に発汗の影響が小さい環境下における熱環境に関する指標として用いられる。
静穏な気流(0.2m/s以下)の下では、室温(空気温度)とMRT(平均放射温度)の平均値で表し、グローブ温度とほぼ一致する。
$$OT≒\frac{t_i + MRT}{2}≒グローブ温度$$
\(t_i\):室温 MRT:平均放射温度
グローブ温度:対流と放射の影響を考慮した温度。銅製で表面が黒つや消しの球の内部の温度を計測する。
平均放射温度(MRT : Mean Radiant Temperature):室内の壁、床、天井、窓などによって囲まれた室内の人体や物体に対して、これと等しい放射熱のやりとりをする均一な室内の表面温度をいう。
平均放射温度を直接計測するのは容易ではないが、対流と放射の影響を受けるグローブ温度に、空気温度(室温)および気流速度から対流の影響を求めて換算することができる。
4-4.室内空気環境基準
酸素濃度:燃焼器具を用いる環境で、酸素濃度が18~19%になると、不完全燃焼を起こして一酸化炭素の発生量が急増する。燃焼器具を用いない環境で、酸素濃度が15%以下で呼吸困難、7%以下で死亡に至る。
温熱環境指標に考慮されている6要素
温熱環境指標それぞれの特徴
最後に
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